アレルギー免疫療法について
免疫療法について
先日の研究会で、免疫療法の最新の治療成績や知見について勉強してきました。自分の知識の整理のためにも、免疫療法について少しまとめておこうと思います。
一般的なアレルギーに対する治療薬は、抗アレルギー剤と言われる物が中心で、症状を緩和するために服用しますが、アレルギーそのものを治す事はできません。
これに対して免疫療法を適切に行うと、
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① 治療効果が長期間持続し、今まで使っていた薬を減らしたり、生活の質を向上させることが期待できます。
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② また今後、他のアレルギーが起きることを抑制できる事が、報告されています。
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③ 小児でダニアレルギーによる鼻炎があると、今後喘息を発症するリスクが高まりますが、免疫療法を行うことで喘息の発症頻度を抑制できることが、報告されています。
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というわけで、今までの治療は “その場をしのぎ” (語弊があるかもしれませんが・・)であるとすれば、免疫療法は“根治”や“他のアレルギーの発症予防”が期待できる治療であるといえます。アレルギー性鼻炎の治療ガイドラインでも、症状の軽い重いを問わず実施できることになっています。
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現在、免疫療法にはスギ花粉症とダニアレルギーに対する治療薬があります。最近になって適応年齢が引き下げられ、小学校低学年くらいの子どもさんから実施できるようになっています。一般的に、若年者の方が得られる効果が高いといわれていますので、他のアレルギーを予防する点からも、子どもさんにお勧めできる治療だと思います。もちろん健康保険が適応しますので、普通のカゼと同じような自己負担の範囲で治療ができます。
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ただし、“体質”を変えてアレルギーを治すわけですから、短期間では効果は出ません。
WHOの見解では3~5年を目安に、自己判断で中断せずに行うこととなっています。
うちのクリニックでも免疫療法のメリットと、長期にわたり治療を継続する心構えが必要であることを説明してから治療を行っています。
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ともあれ、今までのアレルギーの治療薬が、その場の症状を抑える対症療法であったことから考えると、長期にわたり症状を緩和し、新たなアレルギーの発生を予防できる免疫療法は、今後のアレルギー診療において、ますます普及していく治療法であることは間違いないと思います。
発熱と熱中症について
今年はまれに見る酷暑ですね。
ニュースでは毎日のように熱中症による救急事例が報道されています。
クリニックでも、高熱でぐったりした患者さんが来院されると、
熱中症でしょうか?という質問をよく受けています。
でも、そのほとんどは夏風邪などの感染症です。
そこで、今回は熱中症について正しい知識をおさらいしてみましょう。
熱中症とは
高温環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、
体内の調整機能が破綻したりして、発症する障害のことです
そしてその症状は 軽いものから順番に以下のようになります。
I度
めまい・立ちくらみがある
筋肉の「こむら返り」がある。痛い
大量の発汗
II度
頭痛がする
気分が悪く、吐き気・嘔吐がある
しんどい
III度
呼びかけや、刺激への反応がおかしい
けいれんする
高い体温である
ということで、熱中症で高体温の状態になるのは、重症であると言うことになります。
クリニックに来院される程度の熱中症では、めまい、頭痛、倦怠感などの症状が多く、
程度もひどくないものが多いようです。
最後に、熱中症は予防が大切なことはご存じのことと思いますが、
熱中症を疑ったときの初期対応を記載しておきます。
1) 涼しい環境への移動
2) 脱衣(熱の放散を助ける)と冷却(水をかけたり、氷嚢を利用する)
3) 意識がはっきりしているようなら、水分・塩分を摂取する
以上、参考にしてください。
花いっぱいに・・
毎年、医院前の歩道の花壇に花を植えていました。
今年は何を植えようかと迷っているうちに、
職員さんが苗を買ってきて植えてくれました。
お隣の薬局さんへの歩道が、とても華やかになりました。
ウッドデッキのプランターにも花を植えました。
梅雨時期にも明るい雰囲気になりますように・・。
麻疹の流行と緊急ワクチン接種について
昨今、ニュースなどで報道されていますが、沖縄で麻疹が流行しています。特にゴールデンウィークで日本国民族大移動が起きる時期ですので、沖縄地方を越える感染拡大のおそれも出てきました。
このような状況で、沖縄への旅行や、定期接種の時期(1才児、いわゆる年長さん相当児)以外でのワクチン接種についてのお問い合わせが増えてきましたので、Q&Aでお答えしておきます。
Q ① 1才未満でも麻疹ワクチンは接種できますか?
A 生後6ヶ月以上になれば、麻疹の流行時期には接種が可能です。ただし、この場合の接種は自費
になります。また生後1才を過ぎたら、定期接種として、通常の通り2回の定期接種を受ける
必要があり、計3回の接種を受けることになります。
Q ② 今までに1回だけワクチン接種をうけていますが、大丈夫でしょうか?
A 感染予防に十分な抗体を獲得するためには2回接種が必要です。50才以下で今までに1回しか
麻疹ワクチンを受けたことがない方は、感染予防のためワクチンを接種された方がよいと思い
ます。
Q ③ 1才で1回ワクチン接種を受け、年長さんの年齢になっていません。この場合は接種した方がい
いでしょうか?
A しらべた範囲で、明確な指針は見つからなかったのですが、このような方が沖縄への旅行を計画さ
れている場合などは、接種したほうがいいのではないかと考えます。この場合も接種は自費にな
ります。
ウッドデッキを再塗装しました
早春の気配が漂うようになり、
天気のよい日が続いたので、
ずっと気になっていた、日焼けしたウッドデッキの塗装をしました。
塗装前と塗装後です
素人仕事ながら、だいぶん見栄えがよくなりました。たぶん。
子どもたちへのごほうび
うちの職員手作りの折り紙トトロ
とてもよくできています。
検査や注射をがんばった子どもたちへのごほうび。
小児科学会滋賀地方会に参加してきました
去る10月14日に、小児科学会滋賀地方会に参加してきました。その日楽しみにしていたのは、滋賀医大小児科学講座の丸尾新教授による特別講演でした。丸尾教授は私とは滋賀医大の同期で、学生生活を6年間、研修医生活の3年間、計9年間を一緒に過ごしてきた仲です。
丸尾教授の研究テーマは新生児黄疸、体質性黄疸をはじめとした黄疸の研究なのですが、その講演内容の壮大なこと。びっくりしました。
黄疸の素になる物質の働きから、生物種(植物、動物)においてその化学反応に関連する酵素が解毒作用と関わっているという話や、黄疸の素になる物質は、少量なら酸化ストレスから体を守るように働いているという話、新生児期に黄疸が出るのは、もしかしたら脳神経の発達に有利に働いているのではないかということまで、まさに知的好奇心を刺激する内容でした。今後どんなふうに研究が展開するのか、新しい発見があるのかワクワクします。
自分の同期が小児科講座のトップとなり、世界からも注目される黄疸関連の研究のスペシャリストとなったことはとてもうれしいことです。日々の診療を行い、教室を運営し、次世代を担う人材を育てることなど、彼にかかる責任は大変なものだと思いますが、今後の活躍を期待し、応援したいと思っています。
お天気とぜんそくの関係
9月に入ると、急に朝晩の空気の温度が変わったような気がします。昼間の暑さは相変わらずですが、確実に季節は秋へと変わっていこうとしている事を実感します。
さて季節の変わり目、特に秋になる頃は、ぜんそくの患者さんにはつらい時期でしょう。日々の診療の中でも、長引く咳き込みや夜間の咳き込みなど、患者さん自身はぜんそくと自覚されておられなくても、”ちょっとぜんそくっぽいな”と感じるケースが多くなります。
また日によって、本当に今日はぜんそくの患者さんが多いなと感じる日があります。ぜんそく発作が起きやすい条件にお天気が関係しているのですね。以前は台風前・雨の降る前日頃など、天気が悪くなる時にぜんそくの発作が多くなると思い込んでいましたが、開業して毎日多くの患者さんに接していると、どうも低気圧ばかりが発作を引き起こすわけではなく、天気のよい日にもぜんそくの患者さんが増える事を実感するようになりました。
どういう理由でどんなお天気の時にぜんそくの患者さんがふえるのか不思議でしたが、たまたま読んだ「医学気象予報」(角川書店)という本に、そのあたりの事が説明されていました。
それによると、ぜんそく発作が起きやすくなる気象条件は、
①気温の急激な変化
②気圧の急激な変化
③気温の逆転現象(詳細は割愛、私の理解困難なので。スイマセン)
となっており、秋の移動性高気圧に覆われた時にこの条件がそろいやすいとの事です。
やっぱりお天気がよくてもぜんそく発作が起こりやすくなることがあるのですね。
秋は運動会やマラソン大会などのイベントの多いシーズンです。
運動などを含め日常生活が差し支えなく過ごせるように、ぜんそくをお持ちの方、長引く咳や痰などでお困りの場合は、受診される事をお勧めいたします。
おたふく風邪の流行について思うこと
すでにご存じのことと思いますが、日野学区を中心におたふく風邪が流行しています。先日、小学校の養護担当の先生とお話しする機会がありましたが、1学期には70人以上の児童がおたふく風邪にかかったそうです。
これはちょっと異常な流行だと思います。どうしてこれほど流行が拡大し、収束しないのでしょうか??。現在の学校保険法の出席停止基準でおたふく風邪の場合、
「耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫脹が発現した後5日間を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで」
出席停止が必要となっています。
私も診療の場面では同様の説明を行っていますが、どうも腫れてから5日間したら登校(園)してよい、という理解をされてしまわれることがあるようです。
実際に学校でも腫れてから5日間して登校された場合、各児童に痛みの有無を確認するわけにはいきませんから、自己申告通りに登校を認めるしかありませんね。
治癒不十分なまま登校する児童があれば、流行の収束は遅れることになります。
夏休みで流行が収束するかもと期待していましたが、学童保育などの集団生活の場があり、保育所などでも患者さんが発生していますので、このままでは2学期も心配です。
もし、おたふく風邪に罹患された場合、くれぐれも出席停止の基準を守って頂き、5日以上経過して登校の判断に迷われる場合は、もう一度診療を受けて頂くようにお願いいたします。
赤ちゃんの抱っこの仕方と股関節脱臼の関係
赤ちゃんの抱っこの仕方で、股関節脱臼が予防できるというお話です。
先日の日本小児科学会滋賀地方会で聞いてきました。
股関節脱臼(現在では発育性股関節形成不全というそうです)とは、おおざっぱに言うと乳幼児の股関節が“緩んでいる”状態です。発見が遅れ放置されてしまうと、歩き方に影響が出たり痛みの原因になったりします。
一般的に女児の方が男児に比べて6倍多く、患者の30%に同じ病気の血縁者がいます。
それ以外にも冬に生まれた赤ちゃんに多く、モンゴルやアメリカ先住民などの寒い地方で暮らす人たちの間に多いことが知られています。
つまり、先天的な要因以外に環境要因が関連して発生するということです。
環境要因として問題視されているのが、“赤ちゃんの自由な足の動きを制限する”ということです。モンゴルの人やアメリカ先住民たちは、もともと寒い地方に暮らしているので、赤ちゃんを寒さから守るため、体をぐるぐる巻きにするような、まきおむつを利用してきました。また、冬に生まれた赤ちゃんも衣類の量が増えますので、足の自由な動きが阻害されやすいわけです。
で、ここからが皆さんに知っていただきたいことです。
最近、実用とファッションを兼ねて、ベビースリングを利用される方がおられますが、赤ちゃんを横向きに入れてしまうと、足の動きを妨げることにつながります。
また、インターネットなどで紹介されている、“おひな巻き”(ぐずる赤ちゃんを落ち着かせるのに有効といわれている)も、やはり足の自由な動きを妨げます。
これらは、発育性股関節形成不全を引き起こす原因になりうることを、十分に知っていただきたいと思います。